正しいそばの食べ方という話を誰かからか聞いたか、何かで読んだ。
食べ方にもスタイルをもってすれば全てが旨い!
まず、そばを食べに行くのには着物が良い。
右手でそば屋ののれんの隙間に手を入れて、手の甲でそれを上げる。
その開けた隙間に体を30度くらい傾斜させ、髪がぶつからないようにくぐり
左手で戸をひく。
何せ、日本の家では、膝を折ったり、体を曲げたり、
斜めに構えたりする動作が多い。
それは着物文化を生んだ国だから。
洋服は、体のシルエットに合わせ、立体的にダーツを入れて作られる。
生活様式はシンプルに、立つ、歩く、椅子に座る。
ところが着物は、長方形の布を体に巻き、帯で縛って形を作る。
そして、日本の家ではしゃがんだり、膝をついたり、体を曲げたり、ひねったり
等の動作が多い。それらの動作が、着物の美しい皺の芸術を作り出すからだ。
着物に対して洋服があるならば、そばに対してはスパゲティーか。
何せ昼時は混んでいて、相席になるのがおそば屋さん。
豪快な音を立てて食べている男衆の中、女性一人そばを食べるのも
何となく居心地の悪いもの。
女性が着物の場合。
パナマ帽子に白麻のスーツに開襟シャツ、コンビの靴を履き
手には扇子を持った初老の紳士を伴に付けるのが好ましい
(初老の紳士だときっとそばの食べ方がわかるから、真似をすれば良い)。
勇気をだしてさぁ・・・。
初めてのそば屋では、ベーシックなもりそば等を頼む。
スパゲティーで言えば、アールブーロ、アリオオリオぺぺロンティーノ
(良いイタリアンレストランではやめましょう)。
食べる前にきちんとした姿勢で、「うまそう!」と興奮しつつ
見た目と香りを味わう為に、そばを箸で数本取り、何も付けずに食べる。
ちなみにスパゲティーなら、まず巻くスペースを皿の手前にフォークで確保。
口に入る分くらいをくるりくるりと上手に巻き込み、
スパゲティーがフォークより垂れないようにする。
その垂れた数本が、最後に口に入れて吸い込む時にはねてしまう。
のびない内に、はねを飛ばさないように、口に入る大きさを
フォークに巻き込み食べて行くのだが。
決してスパゲティーを食べる時は音を立ててはいけない。
パスタというとあの長いものを想像しがちだが、
イタリアでは、ペンネ、ニョッキ、タリオリーニ、
まだまだ沢山種類がある。
実はイタリアでは、長いスパゲティーより
その他の需要の方が多い。
子供の時から食べ慣れているイタリア人も、はねを飛ばすということか。
さて、そばは汁(本当は「かえし」と言うらしい)が重要。
ほんの少しだけ、つゆ徳利からそばちょこに汁をうつす。
たいがいは汁は宗田鰹(丸)と、鯖節の厚削りした物
(この割合は4対6だったり3対7だったりするらしい)と
出汁昆布を約1時間煮出し、こして作られたもの。
この汁がそばの旨味をひき立てる。
後は、そばを頂くのであるが、そば汁も薬味(ねぎとワサビ)も、
3分の1程度ずつ入れてそばを味わう。
ただし、時間を掛けずに一気に行くことが大切。
一口のそばの分量を汁に、下から3分の1つける。
全部汁につけてしまうのはちょっと・・・。
そばはつるりと喉ごしの良い程度だけ噛み、そばを吸い込む。
この音が、そばちょこの底をかえして、エコーがかかり響くのである。
音を立ててそばを吸いこむ、と言うことは
同時に空気も吸っている。
その空気が口の中でのそばの香りをより立たせるのだ。
ワインや日本酒の利き酒も同様で、ズズズッと空気ごと口の中に含み、
舌の上で転がすように香りを楽しみ、酒を味わう。
さてここで、ちょこに口を付けるのか付けないのかの議論なのだが、
はねを飛ばさないようにするには、口を付けても良いと聞いた。
だって、着物に飛んだら、洗濯は大変。
やはり、世界中の長い食べ物には注意が必要だ!
せいろに残ったそばは箸を立てて使うと取りやすい。
決して残さぬよう、奇麗に食べる。
さて、そば湯は食べ終った汁に残った薬味を入れる
(だからこの為に、薬味は使いきらず少しだけ残しておくのだ)。
だがしかし、余りのそば湯の美味しさに、汁をお代わりしてはいけない。
そばを食べる時の音は外国人が驚く。
私たちがヨーロッパの寒い時のキャフェなどで
彼らが鼻をかむ音で驚くのと、まさしく同じ感覚なのだろう。